ハロウィンの奇蹟

「はぁ、確かに今って彼岸花の季節じゃないし、探すのに時間もかかりますよねー」

「そうじゃて、探しに出てから7年もかかってしもうた」


 何気なく相づち代わりに言った言葉にお爺さんはころころと笑いながらそう言って頷く。


 …ちょっと待って。
 彼岸花なんてちょっと田舎の畦道に行けばふつーに生えてるよね?
 7年って『7年前から今まで探してた』ってわけじゃ――


 直感的に感じた違和感が一番ありえない予想をはじき出す。

 時期を外してしまって7年目にしてやっと、というのなら納得できるがお爺さんの口ぶりからすれば…


「おお、ここかの?4つ目の角は」


 考えが結論に結び付く前にお爺さんの声で現実に戻される。

 気がつけば私が最初に案内した4つ目の角まで来ていた。


「あ…はい、じゃあここを左に…」

「おお、この辺りはまだあの頃の風情がある」


 お爺さんの言葉の通り、この辺りは古くからの商店がそのまま残っていて年季の入った店構えの店舗が多い。

 だけどちゃんと営業しているのは半分ほどで数年前からシャッターが下ろされたままのところも何件かあった。