ハロウィンの奇蹟

「んー…喫茶店なんてあったかなぁ」

「まぁ喫茶店は目印みたいなものなんでのう。3丁目の角まで行ければいいんじゃが…」

「はぁ、それならここを真っ直ぐ行って…」


 4つ目の角を左に曲がって、と続けようとしたところで私は思い直して「そこまで案内しますよ」と言葉を変えた。


 だってそんなに遠くもないし、3丁目付近はまだ回ってないからついでだ。

 それにこの人の良さそうなお爺さんを休日で賑わう人の波の中を1人で歩かせるのなんて気が引けるし。


「助かります。年寄りにはこの人ごみはこたえますのでなぁ」


 案内してもらえることに安心したようで元々下がり気味のシワシワの眼尻が更に下がる。

 一応、こっそりと幸子さんに目配せして確認を取ると彼女は無言で小さく頷いてくれた。


 私は幸子さんからのOKサインをもらうとお爺さんに「じゃあ行きましょうか」と声をかけて賑わう商店街を歩き始めた。