ハロウィンの奇蹟

 …彼岸花ってちょっと時期過ぎて無かったっけ?
 そんな事を考えていると目の前のお爺さんは「ああ気付いてもらえてよかった」と安堵の溜め息を吐いて、
 

「すみませんが3丁目の角にある『リコリス』という喫茶店を知りませんかな?」


と、私に訊ねる。


「え…っと3丁目の角ですよね?」


 私はそう言いながらちらりと幸子さんを見やる。

 私以外は見えないはずだけど思わず確認してしまった。


 そして視線をお爺さんに戻すとお爺さんはさっきと同じく人好きする笑顔を私に向けてくれている。
 

 …よかった、見えてないみたい。