ハロウィンの奇蹟

「んーなにかこー…些細なことでもいいの。何か見覚えのあるものとかないかな?」


 私はさっきみたいに注目を浴びないよう幸子さんの方は見ずに真正面を向いたままなるべく小さな声で聞いてみる。


 土曜の夕暮れの雑踏のお陰で誰かと会話しているようには見えないはず。

 …独りで会話してるアブない子に見えなければいいけど。


 私がそんな心配をしていると幸子さんは綺麗に整った眉を寄せて一生懸命考え始めた。


 しばらく考えてはぁ、と小さく溜息を漏らしながら首を横に振る。
  

 その横顔から長期戦になるのだろうと私は諦めに近い覚悟を決めた。

 まぁなんとなく彼女を見つけた時からそんな気がしてたし。