「あの?」
「いや、官能小説もなかなか面白いなと思って」
「でしょう?」
「ハマっちゃいそうです」
でも友人には笑われちゃった、と笑っていた。
「それじゃあ、バイト頑張ってください」
「はい、ありがとうございます」
官能小説を持ってレジへと向かう黒崎さんの後姿。
「あ」
最終日、彼がお店に来てくれたにも関わらず結局やめることを伝えずじまい。
「えぇ!?」
「佐藤さん、声のボリュームを…」
「どうして言ってないの!?」
仕事終わり、その事をロッカールームで佐藤さんに話せばすごい圧で迫られた。
そんなこと言われても…忘れてたのもあるし、もともと伝える予定もなかったから。
そんな事を言ってしまえばさらに怒られてしまいそうな気がする。



