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次の日、学校が終わっていつもより足早にバイト先へ向かった。
途中少し寄り道をして、2人へ今までの感謝を込めて買ったお菓子はちょっとだけ奮発した。
嗚呼、ついに今日が来てしまった。バイト最終日。
来てほしくないと何度願ったことか。
最後の日だというのにやる事も、客も何も変わり映えがない。
あの官能小説がある棚に足を運び整理していると、背後から誰かが近づく足音が聞こえ振り返ると、見知った顔がそこにはあった。
「黒崎さん」
「こんばんは」
今日も爽やかすぎる笑顔は、周りの人の視線を奪う。
相変わらずだなぁ、と思うと同時に人の視線に慣れていない私はその視線が痛く感じる。
いつもの調子で溺愛の感想を話してくれた黒崎さんは、すぐに次を読みたそうな顔をしている。
「この溺愛、シリーズものなんです」
と溺愛Ⅱを目の前の棚から取り出し彼に手渡した。
まじまじと無言で本を見つめる黒崎さん。どうしたんだろう。



