入口に背を向けているからどんな顔かは分からないけど、若い男の人が3人入ってきたことだけは分かる。
どこかチャラそうな感じがする…そういう人って駅の方にあるスター〇ックスとかに行きそうなものなのに。
これは私の偏見だけど。
彼らは注文を済ませて何やら会話を始めた。
「お前、よくずっと本読んでられるよなぁ」
「本の虫って言ってもいいでしょ」
「五月蠅い」
へぇ、こんな所にも私と同じような本の虫がいるんだ。
口には出さなかったけど、心の中でそっと「同類ですね」と呟いておいた。
「しかも気になる人と話したくて呼んでるんだろ?」
「あのお前がなぁ…健気だな」
「黙れ。本に集中できない」
あぁ、なんだ…気になる人に近づきたくて本に触れるようになったのかぁ。
どんな理由であろうと、本に興味を持ってくれたのは嬉しい事だ。
その調子で読み続けて欲しいな。
「で、今度は何の本読んでんだ?」
「言っても分からねぇだろ」
「いーから、いーから」
私も少し気になっていた。
自分の本に視線を向けているけど、耳は彼らの方を向いていて集中できないでいる。



