ずっと気づかなかっただけ。

さっきの先輩だ…

髪が掴まれてることに気づいてなんとか身をよじるけど、

ーぱつんー

と1番聞きたくなかった音が、

朝の2人きりの廊下に響く。

何回かその音がしたら自由になる身体。

慌てて振り返ると、

自分と同じ色の髪の毛が廊下に散らばってて。

「え…」

呆然とする。

でも、髪を纏めるための落ちた髪飾りをみて、

慌てて、現実に戻る。

「あっ、」

慌ててその髪飾りを手の中に収めて、

ほっとすると同時に、

手に痛みが走る。

「っ、なんで、こんなことするんですかっ」

「…目障りなのよ。」

可愛いけど冷めた声。

手を足で蹴られて露わになった髪飾りを、

先輩がとってポケットに入れる。

「まって、返してください!それは、大切なっ」

「…っち。恵まれすぎてるあんたに何がわかんの、うざ。」

吐かれた言葉と、

走って逃げる先輩。

え…どう、しよう。

呆然と立ち尽くす。