ずっと気づかなかっただけ。


「…まぁ。無視されてもこうやって待つくらいには。」

「…なにそれ。千景の性格知ってる人からしたら、最大級の愛情じゃん。」

くすくす笑う美波さんの声。

でも最後の方は震えた声。

…。

美波さんはほんとにチカくんがずっと大好きなんだ。

私がモタモタしてる間もずっと気づいて想い続けてたんだ。

きゅうっと胸が苦しくなる。

でも、

でも、

チカくんの隣は私がいいの。

…誰にも譲りたくないの。

「美波、悪かった。」

チカくんの声。

「…真白ちゃんのこと言えないくらい鈍感なんだからっ!ほんと!でも、これでやっと前向ける…から、ありがとう!」

チカくんのしばらくの沈黙。

なにを答えようか迷ってるみたい。

伝わって来た空気に、

気になって身を乗り出すと、

視界に入ったのは、

「っ、これで許す!これからは友達でよろしく!じゃあまた明日!」

美波さんが背伸びして、チカくんの頬にキスした姿。

そんな言葉を残して走る彼女の背中は小さくなっていく。