ずっと気づかなかっただけ。

しばらくしてから、太一が

「あー!悔しいっ!わかってたとは言え千景先輩の顔思い出したらムカつく!」

急に大きな声で悪態つくから、

ビクッと肩を揺らして、太一を見ると、

目の端からきらりと光る一筋の跡をみて、

何も言えなくなる。

同じように背もたれに体重をかけて、

上を見上げる。

「…俺は結城の中で何だった?」

「だった、とかじゃなくて、仲良くなってからずっと大切な友達だよ。」

「…1番?」

「なっちゃんもいるから…」

「そこは1番って言ってよ!素直だな。」

ようやく太一が笑ってくれる。

「男友達No. 1だよ!」

「千景先輩は?」

「チカくんは友達ではないから…」

好きと気付けていなくてもチカくんはお友達ではなかった。