ずっと気づかなかっただけ。

「…今日、」

太一がぽつりと口から溢れるように小さな声で話しかけてくれるから、

聞き逃さないように集中する。

「結城とこれてよかった。ありがとう。」

こちらこそだよ、って口を開こうとしたけど、

「…なんか、区切りつけれた気がする。」

太一が続けて話してくれるから開いた口を閉じる。

区切り…

「しばらくは、諦めきれないかもしれないけど、諦めることができて、次に好きな人できたら報告するよ。それまでは好きでいてもいい…か?」

太一の伺うような視線と少し震えた声に、

視線を合わせて、

頷く。

太一が私の目を見て、ゆっくり口を開く。

「…好きだ。」

目を逸らさない、伝えるんだ。

「…ありがとう、でも、答えられない。チカくんが好きなの」

2人とも震える声。

これはきっと私たちの今後のためにも必要な話。

「ん、ありがとう。これで終われる気がする。」

太一がベンチの背もたれに体重をかけて、

足も伸ばして空を見る。