ずっと気づかなかっただけ。



「…ちょっと千景、そんな怯えさすなら渡せない。返しな。」

お兄ちゃんの怒った声に、

チカくんが私を見て気まずそうに視線を逸らす。

「…恭介さんすみません。あとで必ず連れて帰るんで、ちょっと…話させてください。」

ベランダからこっちを覗き込むお兄ちゃんは私を見る。

私は、

「…お話してから、帰るね。」

と答えると、

お兄ちゃんはため息をついて、

「千景、それ以上泣かせたらこの穴塞ぐし、もう会わせないから。なっちゃんのいう、太一くん?にお任せするからね。どのみちあとで説教ね。」

って言ってくれる。

「…はい。」

「はい、変わって変わって!」

ぐへって変な声をして潰されたお兄ちゃんの上には、綾さんが身を乗り出してる。

「千景くん、お久しぶり!嫉妬は可愛いけどその当たり方は可愛くないよ。千景くんが色々真白ちゃんのこと考えてあげてるように真白ちゃんだって考えてんだからね!…お、久しぶりにみたけどクマくんも相変わらずイケメン「ちょ、綾!危ないから!」」

2人の相変わらずのペースに場が少し和む。