ずっと気づかなかっただけ。


チカくんは、私を上から下までみて、

ため息。

「真白、今日来んなって話したよな。」

怒った声に部屋に沈黙が落ちる。

きゅっと手を握る。

「まぁ、いーじゃん千景に用あったみたいだし!てか羨ましいんだけどこんな可愛い格好して幼なじみで彼女が窓から侵入とか!」

クマさん以外の人が盛り上げてくれようとみんな口々に言うけど、

チカくんの返事がないし、

チカくんから発せられる重いオーラに、

次第にシン…と静まる。

「…ごめんなさい。」

泣きそうになる。

たしかに今日来るなって言われたのに、

窓が空いてて、

すぐにでもチカくんに聞いて欲しくて乗り込んだ私が…悪い。

「…早く、帰れ。」

チカくんの声に涙が溢れる。

一粒落ちたそれに、

素早くクマさんが気づいてくれて、

「千景、言い過ぎ。」

とティッシュを私に渡そうとしてくれる。

私はそれを断って、

袖で涙を拭って、

「っ、ごめんなさい!お勉強のお邪魔しましたっ、帰り、ますっ」

お辞儀をして、

笑って出て行こうとする。

…消えたい。