ずっと気づかなかっただけ。


気持ちだけのノックをして、

窓を開けて、入る。

「チカくんっ、あの、…ね、」

途端に集まる視線。

あれ。

チカくんの部屋の中を見ると、

チカくんのお友達と、クマさんと美波さん。

「…千景は飲み物とりに行ったけど。」

驚く私と皆さんの中で唯一冷静なクマさんが、

私に教えてくれる。

「え、いや、帰ります、怒られちゃう…見なかったことにしてくださいっ」

今日来るなって言われてたから、

慌ててベランダに戻ろうとすると、

「え、一緒に勉強しない?」
「マジで千景羨ましい。やばくない?」

とチカくんのお友達に囲まれる。

「…お前ら千景に殺されるよ。」

そのクマさんの一言にみんなが少し距離を置いてくれて、

クマさんにお礼を言って、

開け放ってしまった窓に戻ろうとする。

けど、

「…なんで、いんの。」

開いたドアと現れたチカくん。

間に合わなかった。