ずっと気づかなかっただけ。


綾さんにお礼を言って、

いてもたってもいられなくて、

チカくんのベランダを覗くと、

窓もカーテンも少しあいてる。

あれ、もう解散したのかな?

そのまま侵入しようとすると、

「こら、玄関から行きなさい。いつもそんなことしてんの?…お兄ちゃん複雑…」

お兄ちゃんが私の服を掴んで引っ張る。

「いい加減、そういう意味で妹離れしなさいよ。行っておいで、もしうまくいかなくても話聞くよ。」

綾さんがお兄ちゃんの手をかるくチョップして、

私の背中を押してくれる。

「あ、ありがとうございます!」

綾さんに改めてお礼を言って、

ベランダの穴をくぐり抜ける。

『あのねぇ、真白ちゃんももう高1なのよ?』
『寂しい、真白が千景くんに取られる。』
『もう取られてんだっての。ほら、今日くらい甘やかしてあげるから邪魔しないの。』
『綾〜っ、好き〜』
『はいはい』

なんて会話を背に深呼吸してチカくんの窓を開ける。

チカくん、あのね、おはなししたいよ。