ずっと気づかなかっただけ。


綾さんが離れる頃には、

パンク寸前でフラフラしながらも、

チカくんの言葉を思い出す。

襲われるとか、

危機感をもて、とか、

そ、そういうことだったの??

じゃあ、『あんなの』は、

決して軽んじたわけじゃなくて、

チカくん的には序の口というか、

序の序の口というか。

「でもね、真白ちゃん、千景くんはいい男よ!相手の気持ちも考えず、先行くクズもいるわけだし、ちゃんと真白ちゃんのペースに合わせようとしてるし、合わせたいから、下手に近づきすぎたくないのよ。」

ふふふって面白そうに笑う綾さんに尊敬の眼差しを向ける。

「ちょ、真白、綾に懐くとなかなかお兄ちゃんとしては、心配に…」

「何?「なんでもありません」」

お兄ちゃんのシャツの胸元を軽く掴んで綾さんが言うと、

お兄ちゃんが首を横に振りながら即座に否定する。

「仲良し、だなぁ。私もチカくんに伝えてくる!綾さん、ありがとうございました!」