ずっと気づかなかっただけ。

綾さんが私の前に座って髪を耳にかける。

綾さん美人だなぁやっぱり。

「綾さん綺麗。」

「え、いきなり?真白ちゃんは桃奈に似てるからほっとけないんだよねぇ。」

綾さんが桃奈さんを思い出したように笑う。

桃奈さんもお兄ちゃんと綾さんのお友達だ。

綾さんの親友ってお兄ちゃんから聞いた。

「綾さんはお兄ちゃんと喧嘩、する?」

「するする、しょっちゅう!デリカシーないでしょ、あの人!」

困ったように笑うけど、

愛があって、羨ましい。

「お兄ちゃんは怒る…?」

「怒るよー、でもその分私も怒るけど。」

「…桃奈さんも、彼氏いるんだよね?」

「いるよ、うちの弟と付き合ってるよ。」

弟さんの名前はなんだったっけなと考える。

あ、玲司さんだったかな。

「玲司さんは怒る?」

「玲司はね、桃奈にベタ惚れだし、桃奈に嫌われるの怖くて強く言えないって言ってたかな。」

「嫌われるの…?」

「桃奈も不器用だからね、甘え上手なんだけど甘え下手というか、割と頑張りすぎるから心配なのよ、周りは。だから玲司も言いたいんだけど言うと追い詰めちゃうかもって言えない時もあるって言ってたよ。」

「…仲良しですね。綾さんと玲司さん。」

「げっ、やめてよ。玲司にも嫌な顔される。」

綾さんは嫌そうな顔をする。

不思議だなぁ、

ふふ、と少し笑みが溢れる。