ずっと気づかなかっただけ。


自分のことなのに、

淡々と他人事みたいに話すから少し戸惑う。

…チカくんにとってはそれほど大きなことではなかったってことかな。

でもなんだか寂しくなって抱きつく。

「真白?…引いた?」

チカくんの目は私の様子を伺ってて。

…美波さんにはすごく、すごく申し訳ないけど、

チカくんがこの目を向けてくれるのが私でよかった。

これは当たり前、じゃない。

チカくんの目を見てた自分の目をゆっくり閉じる。

漫画とか映画でしか見たことがない、

けど、少しだけ唇を突き出してみる。

ブサイクな顔にならないように気をつけながら。



あれ。

何秒経っても思ってたことは起きなくて、

目をゆっくり開ける。

「…見るな。」

チカくんの手で隠された視界の隙間から見えたのは、

熟れたトマトみたいに真っ赤なチカくん。