ずっと気づかなかっただけ。


「…なに、」

くるっと振り返って、

嬉しいと悔しいが混ざった目を向けると、

チカくんが目を細める。

「…なんか、怒ってんの?」

「…べっつにぃ!!」

「…怒ってんじゃん。」

チカくんが笑って頭をわしゃわしゃする。

怒ってるけど、

本気で怒ってるとかじゃないのがバレてる。

「千景先輩、俺ら千景先輩に元カノいたとか知らなかったんですけど。」

「なに、太一急に…あいつか。」

ぎらりとチカくんが私たちの後ろを睨む。

あ、さっきの人。

大きく首と手を横に振りながらアピールするさっきの人。

「…俺ずっと先輩は、結城しか興味ないと思ってましたけど」

太一がツンとした言い方をする。

え、ちょっと。

なんでここでその話を…

「…そうだよ。それで合ってる。」

「はぁ?じゃあなんで、」

「あっ、千景いたー!!クマも!バスケ始まるよー?」

急に体育館のフロアの扉があいて、

渦中の美波さんがのぞく。