ずっと気づかなかっただけ。

そっか。

やっぱり、チカくんの言ってた元カノさんは、

美波さんなんだ。

だから普段、女の子のことを下の名前で呼び捨てしないチカくんが呼び捨てのままなんだ。

なんだ、そっか。

そっかぁ…

「幼なじみちゃんは千景の好きな人知ってる？あんな美人振るってどんなっんぐ、」
「お前！いい加減だまれ！千景に殴られんぞ！？」
「えぇ、だって流石にこの子は知ってたでしょ？てか、今でも仲良いから友達としては美波のこと応援してるし、復縁して「うるせぇ！」」

目の前でもみくちゃになりながら、

話が進んでいく。

…友達としては、復縁してほしい、んだ。

目を離してしまってた試合の方に目を向けると、

もう試合は終わってて、

チカくんとクマさんと美波さんで何か話してる。

「ほら、千景って美波の前だと表情柔らかいじゃん？ワンチャンあるって」
「お前、まじで黙って？俺が千景に殺されんの！」

ワイワイと賑やかな周りと反して、

冷ややかな風が吹き抜ける心の中。

「…結城、知ってたわけ？」

心配そうに太一が私に声をかけてくれる。