ずっと気づかなかっただけ。

「え、いや!千景の幼なじみだろ?ほら、俺は入学式で千景にひきづられてたやつ!覚えてない?」

私を覗き込むようにいう。

入学式、チカくんにひきづられて…

「あ、コサージュ…」

「そうそう!その人!」

私の言葉になっちゃんたちの少し肩に入った力が抜けたみたい。

「千景先輩が真白のコサージュ作るのに、この人と作る人トレードしたってやつ?」

なっちゃんの言葉に頷く。

タケくんたちも納得してくれる。

「あー、そうだよな、前あんなことあったもんな。あの女子は親に転校させられたらしいよ?」

え…そうだったんだ、何も知らなかった…

「自業自得よ、とーぜんでしょ、」

なっちゃんの目が据わったのをみて、

タケくんが宥める。

「いや、ごめんね?知ってる顔と名前で嬉しくなって声かけちゃって!」

「え、いえ、大丈夫です!」

私の返事に目の前の人は笑う。

あ、優しい人だ。