ずっと気づかなかっただけ。

じーっとチカくんに視線を送ってると、

「…見過ぎ、試合見ないの。」

太一の拗ねた声。

太一の大きな手が私の視界を真っ暗にする。

「…み、見ます!」

太一の私の視界を遮った手を両手で持ち上げてコートの方に視線を戻す。

でも気づいたら視線がチカくんの方によってて、

パチリとチカくんと目が合う。

「あ、チカくんっ!」

手を思いっきり振ると、

チカくんが笑う。

きゅん。

あ、でも、チカくんの周りの女の子の顔が赤くなったのを見て、

ムッとする。

…やめだやめだ。

チカくんの笑顔をこんな大勢に晒したら、

みんなチカくんがもっと好きになっちゃう。

「…結城は、いつからそんな顔できるようになったの?…ずるい。」

急に太一にほっぺを掴まれて、

首を90度回転させられる。

ほぇ!?びっくりした!