ずっと気づかなかっただけ。

…ノートのことなんて聞かなきゃよかった。

「ち、チカくん元気になったみたいだし帰るね!無理しないでね!」

本当は洗い物までして帰ろうと思ってたけど、

立ち上がる。

「ちょ、もう帰るわけ?」

チカくんが私の腕を掴む。

む、

「無理〜!!」

急にその場にしゃがみ込んだ私にチカくんがしばらく沈黙。

顔をそーっと見上げると、

すごい驚いた顔と、戸惑った顔。

そりゃそうだ、

とんだパニック少女だもんね。

「な、にがっ、無理?触られるのが?」

チカくんの動揺した声を初めて聞いて、

慌てて否定する。
「ちがっくて、えっと、その」

チカくんが私に質問しつつ離した手を追いかけて、

今度は私がチカくんの手を捕まえる。

だらだらと冷や汗が流れてる、そんな感覚。

「あの、チカくんのこと、そういう意味で好きって気づいたんだけど、気づいた途端、こう、なんていうか…」

言葉にできないけど、

なんとか伝えようと話す。
チカくんの返事はなくて、

そのかわり、

私を抱きしめる力が強くなった。

その瞬間、

この気持ちに気づけてよかったって思った。

…明日、タケくんにお礼言わなきゃ。