ずっと気づかなかっただけ。


『何よ、私がやった証拠でもあんの?』

「…どうでもいいです。髪飾り返してください。」

手を伸ばす。

『持ってないわよ。大体なに?ほんと目障りな女!!』

あえて避けずにほっぺにビンタされる。

「真白!クマ、離せ!」
「マジで殴るっ!」

太一が私のすぐ後ろにまだやってきてて、

クマさんが言ってくれたのか他の男の先輩が太一を止めてくれる。

「私、ビンタされても、靴隠されても、髪切られても、チカくんのそばにいます。チカくんからヤダって言われない限り…。」

ビンタした先輩は興奮してるみたいでずっと私を罵倒してくる。

『なんなの、水瀬くんもあんたも、気持ち悪いのよ!』

その一言に、

我慢してたものが溢れる。

パチンと乾いた音が再び教室に響く。

今度は自分の頬じゃなくて、

手がジンジンと熱くなる。

「チカくんのことは悪く言わないで!何も知らないくせに!好きならチカくんにあんな悲しそうな顔させないで!私ならさせない!」

『なっ、なんなの、もう、うざいっ、』

また殴られそうになったとき、

教室中に机が倒れる音が響く。

「いい加減にしろよ、目障りだ、消えろ。」

ひゅっと冷たい風が喉を通る。

チカくんの聞いたことがない声。

目の前の先輩が、

震えて、涙をこぼす。