ずっと気づかなかっただけ。


「離せ、結城!アイツだろ!お前の髪切ったのも、靴隠したのも!」

太一の一言に、

空気がピリつく。

「真白。それ本当?」

チカくんの声。

怒ってる時の色のない声。

何も答えられないでいる私に、

チカくんが歩き出す。

えっ!

太一を離して、

慌ててチカくんを追いかける。

止める間もなく、

チカくんが先輩の胸ぐらを掴んでて。

「チカくんっ!待って!」

腕に飛びつく。

「おい、靴隠した時に言った言葉覚えてないのか?」

『っ、なんでそんな奴ばっかり、幼なじみだからって、』

「あ?」

チカくんの手に一層力がこもって。

「チカくん、ダメ!」

チカくんの腕に飛びついてた手を離して、

チカくんの頬を両手で掴んで無理やり目を合わせる。

「チカくん、」

「…っ、」

あっ…

チカくんの泣きそうな顔。

思わずチカくんのおでこにキスを落とす。

「…は?何してんの、真白」

「おっ、おでこくらい許せよってチカくんが言った!」

「いや、は?」

「クマさん、チカくんお願いします!」

「はっ?おい、クマ離せ!真白そんな奴に近づくなよ!」

すぐ後ろまで来てたクマさんがチカくんを捕まえてくれる。

私は深呼吸して、先輩の前に立つ。