ずっと気づかなかっただけ。

扉に隠れて深呼吸。

笑顔。

いつも通り笑顔。

みんなからパワーもらったんだもん、大丈夫。

「美波、うるさい。あ、どうしたの、高木たち。」

今気にするところじゃないのに、

あ、チカくんも呼び捨てなんだって心の中で引っかかる。

いや、違う。

今はそれよりも、だよ。

チカくんが廊下に身を乗り出してきて、

ようやく目が合う。

「…真白、かみっ「チカくん!見てイメチェン!クラスの子たちがしてくれたの!似合う?」」

被せるように言う。

しばらくの沈黙。

伸びてきたチカくんの手に少し緊張する。

「…似合う。」

ふわりと頭に重み。

いつもいつも私を甘やかしてくれる優しい手。

涙が出そうになるのを堪える。

「…学校で切ったわけ?」

チカくんの探るような声。