「それ、意味わかって言ってるの?」
 今度は実取(みどり) (じゅん)が眉毛を「へ」の字にして振り向いた。
 聞こえちゃった?
 …てか、なにをはじめたの、この子は。
 二紀(にき)の髪に指なんか差して。
 知らないわよ。
 それ、めっちゃ激おこスイッチよ?
「あれ? かたい。なんでこんなに固めちゃうの、二紀。さわりごこち悪いよ」
「ちょっと準! さわらないで!」
 ほーら。
 これで、きみたちの仲も終わりね。
 短いオトモダチ生活だったわね。
「ごめん」ぱっと手を離した実取 準が、その手を背中で組んだ。
「許して二紀。二度としない」
「…………」
 あらやだ。
 なんで黙っちゃうのよ、二紀。
 絶交でしょ? 絶交レベルの不愉快でしょ?
「――いい…けど」
「ぇぇぇぇぇ」
 思わず声が出たわたしを二紀が唇をとがらせてにらんでくる。
 なんでしょう。
 ぼくはそんなにコドモじゃないとでも言いたい?
「準にはこれから、いやなことはいやだって言うから」
「うん。ありがと二紀。うれしいよ」
 ええええええ。
 わかりあっちゃうの? 許しちゃうの?
 こんな街中の雑踏で、青春しちゃうの?