『…好きなんでしょ? 結城さんのこと』ですって?
実取のやつ……。
そんなことでわたしを脅せると思ったら大まちがいだからね。
なんであいつにまでバレた? と思うと、むかつくけど。
わたしが結城先輩にあこがれてるのは、みんな知ってるんだから。
わたしなんか、ただのギャラリーだから。
見てるだけだから。
美香キャプテンに、じゃまとも思われてないんだから。
「…………」
…ばかだ。
自分で思っていて悲しくなってきた。
美香キャプテンがパンパンと手を叩く。
「はい、じゃ…ノック終了した者から1、2年はサーキット。3年は1セットマッチ」
「はーい。…やれやれ。メーメ、腹筋いっしょにやろ」
「うん」
フロアのすみに移動しながら、美香キャプテンが結城先輩のほうに歩いて行くのを目の端にちらっと見た。
「結城。もう1年の相手なんか、いいかげんにしないと。あさって個人戦なんだよ」
「準、今のちょっと、もどりが遅かったぞ」
美香キャプテンは仁王立ちしてるのに、結城先輩は完全に無視、だ。
わたしはびっくりして立ち止まっちゃったけど、桃子も好奇心まるだしの顔でふたりを見てる。
「すごーい。美香キャプテンを無視できるのなんか、結城先輩だけだよね」
桃、声が大きい!
し――っ。
「結城! 今はひとのことより自分のことだって言ってるの。聞こえてるんでしょ?」
聞こえてますとも美香キャプテン。
フロアのすみにまでビンビンに響いてます。
「いいから、準。外野は気にするな」
「聞こえてるならこっち向きなさいよ、大輔っ」



