わたしはきみが好き。

 後輩として。
 弟の友だちとして。

 じゃあ、今、わたしの手をにぎる男の子に感じるこの好きは…なんだろう。
一路(いちろ)……」
 うわぁぁぁぁぁぁ。
 境界を一気に飛び越してくれたのは、また(じゅん)

 わたしは八木(やぎ) 二紀(にき)のお姉さんじゃない。
 ただの八木 一路になりたかった。
 なりたかったのに。

 準の手、熱い。
 い…やだ、準。
 わたし、こわいよ。

「それでいいね?」
 わたしは黙って首を横に振ることしかできなくて。
「手…離して……」
 お願い、準。
 わたし…こんなに困ってるのに。
 そんなふうに見ないで。
 い…や、だ。
 視線がはずせない。
「ずっと待ってた。…あなたがぼくのほうを向いてくれるのを」


 初めてのキスは左のほっペ。
「やれやれ……」
 生意気な坊やは、そうつぶやいて笑ったけど。
 直前に逃げたのは、確かにわたし。
 だけどそれが今のわたし。
 素直なわたしです。