「きらわれてないとは思うんだけど――。どんなふうに思われてるのか、全然、わかんなくってさ」
「ふ…ぅ…ん」
 (じゅん)の…好きなひと。
 そうだよね。
 いるよね。
「弟…みたい、とか。かわいい後輩…とか。そんなのいやなんだ」
「ぇ…」

 ずっき-ん

 胸に刺さる天使の弓矢。
「聞かせてよ」
 ああ……。
「ぼくは、あなたをなんて呼べばいいの?」
 聞かないで。
「聞…かない、で」
 ここから先に、わたしは進めない。
 わたしからは、言えないの。
 もう…知ってるじゃない。
「また、一路(いちろ)さんて、呼んでもいいよね」
 テーブルの向こうから、準の腕が伸びてくる。
 そっと、わたしの手にかさなった手を、わたしはやけに素直に受け止めて。
 (どうしたんだろう)
 ふりはらうことだって、できるはずなのに。
 だんだん力がこもってくる準の手に、自分の手を任せてしまう。
「準……」
 わたし、わからない。

 こ…れが、この気持ちが大好き?

 これがわたしが引いた線の向こう側?