「だいたいあんたは……ぁ?」
 わたしにお説教する気満々の桃子が、それよりもっと気になることを見つけたらしい。
「ラッキー」
 桃子の目がそれて、小さくガッツポーズ。
「こら、小松! まったくなにやってんの、あんたは」
 次のターゲットは小松か。かわいそうに。
 結城先輩は『けしておまえがひとりだから、おまえじゃないんだぞ』って小松に言った。
 うん。
 わたしも、キャプテン小松、いいと思うな。
 今年のおとなしい1年生たちには、やんちゃな武田より、小松のおだやかな性格のほうがマッチすると思う。
 どうせなら小松が勧誘係だったときに入部してやってくれていたらねぇ、とも思うけど。
 先輩たちが、結城先輩や真澄先輩にあこがれてバド部を選んだように、今年の1年生は実取(るびみどり) (じゅん)にあこがれて入部してきたようだから、小松の手柄にならなかったのは仕方ないね。
 なんで男ばかり増えるの? って。
 ぷんぷん怒ってた二紀(にき)が最大の問題児になったのも、小松の責任だしなぁ。
「あーもう、二紀。おれ、怒られたから自分でやって」
「やだ。キャプテンやってよ」
 あ-らら。
 二紀のやつ、勇者だなぁ。
 桃子がにらんでるぞ。知らないぞ。
「ちょっと、小松。あんたがそういう態度だから、二紀ちゃんも甘えちゃうのよって言ってるでしょっ」
 どすどすアリーナを横切っていく桃子の背中を唖然と見送る。
 なんで小松? 
 叱るべきなのは二紀でしょ、桃子さん。