「じゃ、みんな。期末試験、がんばってね」
「ハーイ、八木(やぎ)キャプテン」
 未だにキャプテンと呼ばれると背中がむずがゆいわたしが、てへっと笑うと横で桃子が両手を腰に当てた。
「こらこら。返事はハイ! ハーイじゃないでしょ」
「はいっ、桃子先輩!」
 ううっ。
 みなさん良いお返事。
 どう考えてもこの人事は、失敗…よ、ねぇ。
 わたしより桃子のほうが、絶対、むいてるけどなぁ…キャプテン。

 ブロック大会が終わって、3年生の先輩たちは引退。
 結城先輩が、わたしにとんでもない役目をおしつけて、OBの仲間入りをしてからそろそろ3週間。
 新制バドミントン部は骨折した武田をいれて2年生7人。1年生14人。
 この…2年より1年が多いという状況が、桃子には気にさわるらしくて。
「ちょっと、メーメ。あんたがキャプテンになって3週間。たったの3週間で、キャプテンてやつの威厳が、まっったく! なくなった気がすんのは、あたしの錯覚?」
「さ…あ?」
 そんなこと言ってもなぁ。
「桃子、メーメ、先いくよー」
 あっあっ、待って、みんな。
「じゃ、わたしたち、お掃除に入りますね、キャプテン」
 わーん。
 お待ち、1年生!
 わたしをひとりにしないでよぅ。