ささやきはピーカンにこだまして


 二紀(にき)をにらみたおしている目の端に、一瞬とぎれた人の流れの向こうのジーンズの脚。
 あっちもこっちもジーンズだらけの視界の中で。
 なんでその脚だけが特別、目に止まったんだろう…と考えて。
 (ああ……)
 その脚だけが、立ち止まっていたからだ、と気がついた。
「そうだ、姉貴。実取(みどり) (じゅん)、紹介するよ。いっしょなんだ」
 ミドリジュン?
「準!」
 このうれしそうなこと。

 ミドリジュンというのは二紀のアイドルで、中等部の軟式テニス部のキャプテンだった男の子だ。
 うちは進学校なので、部活はせいぜい課外授業のノリ。成果は求められていないし、求めている子も少ない。
 テニスで全国大会にまで行っているミドリジュンは、二紀のように『汗くさいのなんてカッコ悪いじゃん』と平然と言い放って、わたしをイライラさせる軟弱男にも相当にインパクトのある子だったらしい。
 高等部で同じクラスになったとわかった入学式の日の夜は、夕食のおかずに出た肉団子を、わたしが二紀のお皿からみっつも横取りしても気づかずへラヘラ笑っていた。