わたしは『荷物持ちをですかい?』ってふてくされてみせたけど、わかってた。
 二紀(にき)と小松じゃ、まだまだ1勝の重さにあえぐだろうって。
 でもそれは補欠にもなれないわたしが言うことじゃないし。
 母さんが応援したいのは勝敗に関係なく、がんばる二紀だってことは、いっしょにお弁当を作っていればわかるから。
『がんばれ、二紀ィー!』
 玄関で叫んだ母さんには、わたしが思いっきり手を振ってあげた。
 もちろん二紀はひとこと。
『うぜー』


 7時。
 二紀のあとを、今日だけは荷物持ち、お弁当の入った大きなボストンバッグを抱えて駅に着くと準と小松がもう待っていた。
「先輩も準も、遠回りさせて悪いね」
 えっ。
「いいよ。ここまでは定期だし。みんないっしょのほうが心強いし」
 え、え?
 小松が小脇に抱えていたウインドブレイカーに腕を通し始めた。
「こんなの……。恥ずかしくてひとりじゃ、いやだわ」