「あの…、先に食べてたら? あいつら、のんきに遊んでるのよ、きっと」
「――そうですね」
「…………」
 そう言う(じゅん)の声はなんだかほっとしたかんじで。
「…じゃ、お気をつけて」
 そう続けられたとき、わたしの目はいきなりぽわーっとくもって、まばたきもできなくなった。
「うん。これ、よろしくね」
 自分のスニーカーの爪先を見つめながら、紙袋を準の胸元に押しつける。
「あっ……」
 痛っ…と思ったときには、血がにじんでいた。
 犯人は準の右の人差し指にちんまりはまっていたプルキャップ。
 わたしはとっさになんでもないふりで手をかくしたけど。
「えっ…?」
 準は気がついて、紙袋を受け取った自分の右手を見下ろしている。
「じゃあね」
「先輩っ! 手!」
 わたしはもう準に背中をむけて、走りだしていた。
「だいじょーぶ!」
 大丈夫だよ。
 だってきみは――、きみの手は、もっとひどく傷ついたじゃない。
 校舎の影に入って、準から見えなくなったところで立ち止まる。
「痛…い」
 どこ、が?
 痛いのは――どこ?

 アナタ ハ ナゼ ナイテル ノ?

 自分が遠ざけておいて。
 いまさら!
 きみが《後輩》したって、わたしは泣いている。
「ばっかじゃないの?」
 左手の小指から手首まで。
 細く流れる赤い血は、まるで切れちゃった運命の赤い糸。
「ふん……。悲劇のヒロインしちゃって、さ」
 ぶんっ…と振った手から

 赤い涙が校庭に――――ぽたっ。