「き…みは、どこまでも自分を磨いていけるひとだから――。合ってると思うよ、シングルスが」
「負け続けても気持ちが持つか……。わからない」
 はっとして見てしまった。
 手すりにもたれて遠くを見る(じゅん)を。
「そんなことない!」
 叫んでしまう。
 止まらない。
「きみはちゃんとつかめるよ。その手で、きみのほしいものを、ちゃんとつかめる。だって、がんばれるんだもん。カド先輩をねじふせて、もっと上を見ろって行動で伝えられるきみなら、絶対――…」
 だけど、その先は言えない。
 軟テのジュニアチャンプだった準が目指すなら、それはわたしなんかには想像もできない遠い、高い、場所だって。
 わたしにだってわかるもの。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 また続いてしまう沈黙は苦しいけれど。
 そばにいられるのがうれしい。
二紀(にき)たち、本当に…遅い」
「…………ぁ」
 自分のことばかり考えていたのが恥ずかしい。
 そうだ。準はお昼ごはんがまだだ。