ささやきはピーカンにこだまして

 なにかしゃべってよ。
 どうしたの。
(じゅん)たら!」
〔…………〕
 ざわめきをBGMに続く沈黙。

 たりゅりゅりゅりゅ

〔やっ…り、聞き…ちが……ゃな…った〕
「準?」
 聞こえない。
 聞こえないのよ。
〔あな…が……を…き…も、………あ……が…きだ〕
 駅の出発アナウンスにかぶって、準がなにか言っていることしかわからない。
「ごめん。聞こえない。もう一度言って」
 駅なんかから電話してくるから。
 家デンじゃあるまいし、ケータイなんだから場所くらい選びなさい。
「準たら! 聞こえてる?」
〔ごめん〕
 ふっと静かになった瞬間、それだけが耳に届いた。
 ごめん…て、準。
〔忘れて〕
「……ぇ……」

 ぷっ
 ツーツーツーツーツー



「なにやってんの、姉ちゃん?」
 いつのまにか二紀(にき)が、駅ビルのスポーツ店の紙袋を片手に下げて帰ってきていた。
 わたしはだいぶ長い時間、ぼーっと電話機の前に突っ立っていたらしい。
「おかえり」
 ふつうにリビングを出ようとしたのに、膝がかたまってしまっていて、踏み出す足がよろめく。
「ほらほら、見てよ」
 二紀が、がさがさと取り出したのは箱に入ったウォーターアレイみたいだ。
 さっそくテーブルの上に置いて箱を開けている。