ささやきはピーカンにこだまして

 どうしよう。
 こんなときに頼りになるのは、結城先輩の笑顔。
 お…もいださなくちゃ。
 いいの。
 片思いでも、いいの。
 弟の友だちなんか好きになるより、よっぽどマシよ。

 …好きに……なるより?

「いや――っ」
 ちがう、ちがう、ちがう。

 るるるるるる るるるるるる るるるるるる

 突然のその(いえ)デンの呼び出し音は、わたしを現実に戻してくれるには、充分すぎるくらい現実で。
 驚くよりほっとして受話器を取った。
「はい、八木(やぎ)です」
 電話の向こうがざわめいている。

 たりゅりゅりゅりゅ

 遠くに聞こえたのは列車の発車ベルだろう。
 駅だ。
〔――――ぼく――〕
 その声は、ざわめきでかきけされてしまった。
「んもう。二紀(にき)なの? どした? うるさくて聞こえないよ」
〔声もわかってもらえないんだ〕
「……え……」
 じゅ…ん?
「やだ、(じゅん)? ……どうしたの? 二紀、ケータイに出ない?」
〔家デンにかけた〕
「…………」
 なんで?
 ああ、母さんにお礼か。
 なんて律儀な子なんだ。
「待って。いま母さんに代わ」〔待って!〕
 ――え?
 受話器を耳に押しつけても駅のざわめきしか聞こえない。
 え。
 やだ。
 ちょっと。
「準?」