ささやきはピーカンにこだまして

「お帰りぃ。パトロールごくろーさまぁ」
 手すりからのりだして、おいでおいで。
 優雅に歩いてきた猫ちゃんに両腕を伸ばしていると、うしろでカラカラと窓が閉まって。さりさりとスリッパがコンクリの上を歩いて来る気配。
「お客さんは? まだ寝てるの?」
 あー。
 今ごろ眠いとか、どうしよう。
「起きてるよ」
 いきなりばっちり目がさめた。
 まさか黄色のレイカーズが(じゅん)だったなんて。
 わたしの視線に気づいて、準が左手をスウェットのポケットにつっこんで、はたはたと揺らしてみせる。
「これ? 二紀(にき)に借りた」
 言いながらスリッパを床に置く準の前髪がおでこに落ちて、眉毛まで隠している。
「…………っ」
 いつも無造作に横に流してるから気づかなかったけど。
 真っ直ぐで濃い眉毛が髪に隠れてしまうと、大きなくっきり二重の目が強調されて、とてもかわいい。
 思わず両手で口元をおさえて、驚きの表明。
「どうしてそう、いじわるなんだ」
 準がそっぽを向いて前髪をかきあげる。
 ご…めん。
 ごめんね、準。
 でも――…
「あははははは」
 これは笑うよ。
 わたしはまちがってない。
「どこの坊やちゃんかと思った」
 準は、ますますブスッとした顔で、何度も何度も髪をかきあげるけど。
 いうことをきかない髪は、すぐにさらさら額に落ちてくる。
「しょうがないだろ、ねこっ毛なんだから」
 ふぅーん。
「かわいいね。小学生みたい」