ささやきはピーカンにこだまして

 それでも言いつけどおり、お湯を止めて。
 首が熱くなるほどブローして。
 しばらく、ぼーっと洗濯機に寄りかかってしゃがんでいたら、母さんがもどってきた。
一路(いちろ)?」
 なによっ。
 もうお客は帰ったの?
「わたしのことなんか忘れてたんでしょ」
「ふふふ。そうなのよ。(じゅん)くんと話してたらママ…すっかり忘れちゃった」
 うう。
 本当に泣くぞっ。
 ゴのつく虫が出るかもしれないって、おびえるのも忘れるほど放心してたんだからな。
 立ち上がって、短パンのおしりを、これみよがしにはたいていると、母さんが口を袖でおさえながら不服顔。
「ちょっと。せっかくピカピカにしたのに、埃をたてないでよ。二紀(にき)たち、これからお風呂なんだから」
 ――たち?
「そうそう。準くん泊まっていくんだから。あなた、サッサと歯をみがいて、トイレ行って。明日の朝までおとなしくお部屋にいるのよ、いいわね!」
「…………」
 驚きのあまりよろけて壁に激突したわたしを、母さんは完全に無視して、お客用のふかふかタオルとバスタオルをハミングしながら脱衣カゴに置いている。
 れ…いせいに、ならなくちゃ。
 冷静に。
 あいつはただの後輩なんだから。
 二紀の友だち…なんだから。