蘭の言葉が届いたのか、子どもたちがゆっくりと匍匐前進で動き出す。時折り銃声にびくりと肩を震わせても、一瞬体の動きを止めてしまっても、ドアの方に向かってみんなゆっくりと進んでいく。

「ここまで来れば、有効射的距離から離れているはずです」

蘭は教室のドアの辺りまで来るとゆっくりと立ち上がる。ドアに来るまで、飛んできた銃弾がたくさん転がっていた。

「本当だ。もう銃弾が届いていない」

子どもの一人が言ったことで、他の子どもたちもゆっくりと立ち上がる。向かいの建物にいたスナイパーたちも弾の無駄と判断したのか、射撃するのをやめたようだ。途端に教室は静かさに包まれる。

「あとは学校の外まで行くだけだよね」

震える手で一人がドアを開けようとする。その手を蘭は素早く掴んだ。

「危険ですので、私がドアを開けます。皆さんはこちらにいてください」

蘭は自身から少し離れたところに子どもたちを誘導し、ドアを見つめる。先ほどからドアの向こうから人の気配がするのだ。