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それから程なくして、早々に戴冠式が執り行われた。
それに相応しい吉日に盛大な式典をと、周りは口々に言ったのだが。
『そんな暇も、余分な蓄えもない』
新国王がそう言うのだから、仕方ない。
キースをはじめ、難色を示す人間をアルフレッドは押し切った。
ひょいっとばかりに、王冠を頭に載せてしまったのである。
「びっくりした。アルフレッドも強行したりするのね」
つい弟の方に目がいきがちになるが、兄の方もそれなりだ。
大多数の人間に反対されるのは分かっていたが、王様もその弟もジェイダの出席を望んでくれたから、その姿を見ることができた。
戴冠式というには随分質素で短い時間だったが、こうして王様と話すこともできるなんて何だか不思議な気分だ。
「ふん。こんなものを被るのに、終日無駄にすることもない。それに、下手したら民にも迷惑がかかる。……この状況でお祭り騒ぎをされるなど、迷惑以外の何でもない」
大がかりな式になれば、費用も警備に当たる人員もそれなりに必要になる。
国民としても、お祝いせずに無関心でいる訳にもいかない。
「でも、わりと……似合ってるわ」
画的にはロイに敵わないが。
(愛想のない、優しい王様ね)
「……被らされているのにすぎん」
自嘲するアルフレッドに、ジェイダはすぐに自らの発言を後悔した。
「だが……褒め言葉として受け取っておこう」
そう付け足してくれ、ジェイダも微笑み返す。
相変わらず口数は少ないが、少しだけ表情が柔らかくなったようだ。
(ちょっとずつ、気を許してくれているのかしら)
ロイとは違った意味で、アルフレッドの感情も読み取りにくい。
けれども彼もまた、国の為に尽力していることは伝わってくる。
この状況を憂いでいることも。
差別の色なく、ジェイダを見ていることも。
「……不甲斐ない王ですまない」
驚いて見上げれば、ジェイダよりもずっと高い位置で、青い瞳が見つめていた。



