翡翠の森


ガサガサッ。


「「……!! 」」


慌てて身を引き合うと、そこには子供がひとり。

男の子だ。
どうやらトスティータともクルルとも違う、いや、そうではなくて……。


「あ……」


急いで駆けつけた、その子の両親。

父親は金髪に青い瞳。
母親は黒髪と同じく黒の瞳。
ちょうど、ロイとジェイダと同じように。


「なんだ。僕たち、第一号じゃなかったんだね」


何だか照れくさくて、どちらともなく会釈して彼らは帰っていった。


「うん。でも、それって……」

「だね」


すごく、嬉しいことだ。

他にも、同じ想いを抱えている人がいた。
けれどもこれからは、隠さなくったっていいのだから。


「まったく、なかなかお帰りにならないと思えば!!」


ほんわかした雰囲気をつんざく、その大声はもちろん。


「ジェイダ……!! 」


デレクの大声に抵抗する間もなく、彼女が飛びついてきた。


「ジン!! 」


ぎゅうっと締め付けてくる、女性にしては強い力も。
男でなくても目のやり場に困る、羨ましくて仕方のない胸も。


「会いたかった! 」


護衛という役を解かれたら、彼女はとても泣き虫だ。
ジンの涙につられて、こちらも貰い泣きしてしまう。


「……早かったね」

「何を仰いますか。若君の居場所など、決まっているのですから。これでも気を利かせたのです」


延々と若君愛を語る、デレクの懐かしいこと。


「そういえば、あのことは伝えたのですか? 」

「ああ……忘れてた。自分のことが忙しくてさ」


何だろう。
三人の顔を見ると、悪い話ではなさそうだが。


「エミリアがおめでた。二人とも君に会いたがってたから、今度顔を見せに行こう」

「ほんと……!? 」


嬉しいことが嬉しいことを呼ぶようで、胸が温かいもので満たされていく。


「……あれだけバタバタしといて、よくやるよな」

「ロイ様が不器用すぎるのですよ」


静かな森が大騒ぎだ。
けれど、皆笑っている。

幸せすぎて苦しいとは、なんて贅沢な悩みだろうか。
でも、ちょっとだけ追いつかなくて、彼の肩に重みを預けた。


「お疲れさま。後はもう、僕に囚われてね。……少なくとも、今夜は」


こっそりと、すごい台詞を耳打ちされ。
遅いとは分かっていたが、ジェイダは狸寝入りに専念することにした。