翡翠の森




《あー、もしもし? それくらいにしてくれない? 》


頭の中で響いた声に、二人同時にパチリと目を開けた。


「「マロ?? 」」

《お久しぶり。ちなみにその辺にレジーもいるから、本当にそれくらいにしといた方がいいと思うよ》


その言葉に、ロイがガバッと体を起こした。


「……レ、レジー……?」

「何だ、気づかれたか。こんな森でその先に進んだら、ぶん殴ってやろうと思った」


茂みの中から現れた兄は、にこりと笑ってそんなことを言った。


「……にしても。お前ら今、マロって言わなかったか? 」


怪訝そうに言うレジーに、ジェイダが説明しようと口を開く。


「兄さんは知らなかったものね。マロは……」

《キミたちに伝えたいことがあるんだ》


だが、マロに遮られてしまった。


「な……? 」


レジーがぎょっとしたのを見ると、マロは兄にも話しかけているらしい。


《ようやく、ここまできたね。まだ、全て実現した訳じゃないけど……キミらを見てると、もう一度人間を信じてみてもいいかなって》


マロらしくない、静かな喋り方。
それが何だか、永遠の別れみたいで悲しくなる。


《……さて、ボクはもう行くよ。ちょっと疲れちゃった。最後に、伝言!! 》


さわさわと木の葉が揺れた。
皆できょろきょろしてみても、やはり誰もいないのに。

――みんなの幸せを願ってるよ――

――大好きな子供たち――

頭の中で聞こえたのは、マロの声ではなかった。
これは、もしかして――。


「ロド……」


驚きのあまり、言葉にならない。
大きく口を開けたままの三人に、クスッと笑うかのごとく。
再び木々がざわめき――やがて、森に静寂が訪れた。


「もう長いこと、ロドニーの声を聞いてないけど。……確かに、ロドニーだった」

「正直、頭がどうかしたのかと思ったが。……そう信じたっていいさ」


(……見守ってくれて、ありがとう)