翡翠の森





そう、ずっとずっと見守っていたかった。
キミの幸せを眺めていたい。
その笑顔の先には、また別の笑顔が待っている。本気で信じかけた時、それは起きた。


『ジェマ……!! 』


ロドニーの叫びも、轟々と唸る炎に消されてしまいそうだ。


『ロドニー! 私はいいから、早く外に……』

『そんなことできる訳ないだろ!! あいつらは!? 』


火の手が上がる。
そう思う間にも、悪魔が覆い尽くすかのように広がっていた。
小さな家を囲むのなど、時間はいらないというように。


『レジーは外へ。でも、ジェイダが……! 』

『……くそっ、あいつはまた、一人で隠れて遊んでるんじゃ』


(……何でこんなこと……!! )


ひっそりと住んでいただけなのに。
ただ、幸せをを願っただけなのに。


『マロ……!? ここにいては駄目。あなたなら、まだ間に合うかも』


助けたい。
どうにかして、この愛しい存在を。


《……ジェマ》


なのに、できない。
見れば彼女は足に怪我を負っていて、動けないでいるのだ。
ロドニーだって、愛する妻を置いていけるはずもない。


《キミの願いは何? 》


精霊にできることは、たったひとつ。


『あの子を助けて』


子リスが現れると、ジェイダは大人しく後をついてきてくれた。
煙を吸っていないか、火傷をしていないか心配だったが、奇跡的にジェイダは無傷だった。


(……レジー)


茫然と立ち尽くす、少年が痛々しい。
理解できていないのか、それとも理解してしまったのか。
兄の後ろで、いい子で待っている少女も。

――何が精霊だ。

ジェマを救えなかった。
二人の子供たちだって、この先どう生きていくのか。
世界どころか、ふたつの国どころか。
一家族すら、助けてあげられないなんて。

子リスは泣いた。
人の耳には聞こえないが、あらん限り泣き叫んだ。
悲しみなのか怒りなのか、終いには何も分からなくなるほどに。