翡翠の森



・・・


『あれ、またそいつといるの』


ロドニーが近寄り、精霊はパッと飛び退いた。


『あっ……もう。驚かせちゃったじゃない。最近、よく遊びに来てくれるの。ね? 』


おいで、おいで。
ジェマの細い指に誘われ、彼女にくっついた。


『脅かすつもりはないけど。でも、なーんか邪魔してくるんだよな。そのリス』


(邪魔してるんだよ。分かってんじゃない)


恋だと認めていなくても、ジェマに会いたい想いは抑えきれず。
精霊は子リスの姿を借りて、現れることにした。
女の子は、小さくて可愛いものが好きだろうという、単純な打算からである。


『嫉妬深いのね』


けらけらとジェマが笑う。
その笑顔が大好きだった。

祈り子なんてふざけたものに選ばれても、町を追い出されても。
幸せそうに笑ってくれる、彼女の強さが眩しかった。

汚いばかりだと思っていた人間が、こんなにも美しく輝いているなんて、精霊は知らなかった。

こんなに綺麗だったら――……。


(一緒にいれるかも)


ずっと、ずっと。