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腹立たしい。
人間とは、どうしてこうも勝手なのだろう。
分かち合うとか、助け合うとか。
利がなければ、そんなことも思いつけないのか。
全ての力を使いきってもいいから、懲らしめてやりたかった。
住処にしているこの森も、このままでは消えてしまうかもしれないのだから。
破壊。
略奪。
自分や味方だけが得ることができれば、奪っても苦しめていいとでも言うつもりなのか。
如何に人間が酷くても、一存で罰など下せば神の怒りを買う恐れもある。
もはや精霊ではいられなくなるかもしれないし、力を失い消滅してしまうかも。
(もう、それでもいい)
それほど腹に据えかねていたが、精霊は一瞬だけ思いとどまる。
行動に出る前に、もう一度目に焼きつけておこう。
そうすれば、容赦なく知らしめることができるだろう――そう思って、クルルの町へと降り立った。
『ったく、暑いな。あっちが羨ましいよ』
『本当。むこうは涼しいんだろ? 気候のいい、恵まれたとこだけ奪っていきやがって』
聞こえてきた会話に、精霊は呆れ果てた。
何と勝手な世間話だろうか。
ひとが困っていることには目もくれず、ないものばかりを欲しがるとは。



