翡翠の森





「僕もここまで……なんだね」


禁断の森。
彼が送ってくれるのも、ここまで。


「今日はこれで帰るけど。次はこうはいかないから、覚悟しておいて」


あの時は本気で離れるつもりだったのに、一度認めてしまえば、どうしたって無理なのだ。
だが、もう逃げはしない。


「……楽しみに待ってる」


諦める覚悟ではない。
彼を好きでいる覚悟だ。

次は一体いつになるのか。
お互いの国を往き来しても平気になるのは、どれくらい時間が必要なのか。


「うん。何かあれば、すぐに知らせるんだよ」


手紙のやり取りくらいはできる?
でもそれも、長く続かなかったらどうしよう。


「そんな顔してると、連れて帰るよ」


きっと、泣きそうな顔なんだろう。
他に大変なことはあるのに、自分の恋愛についてはどうも弱腰だ。


「ロイが格好よく拐ってくれるのを待ってるわ。その間に、私は私ができることをする」


(私の王子様に、絶対にまた逢える)


甘くて優しくて、結構意地悪。
……だけど、信念の強い王子様。


「言ったね。……その言葉、忘れないで」