何も言わないジェイダを呆れたように見ると、近くの椅子に座る。
隣に来てくれてもいいのに、彼女はそうしてくれないのだ。


「私は女です。それ故、重要な任務に当たることはなかった」


もしかしたら、これが初めての大きな仕事。
それだって、どこの誰とも分からない小娘の護衛だ。


「どんなに無能な男どもを薙ぎ倒しても、ですよ。いえ、もしかしたら……だからこそ、雑用ばかりさせられていた」


ロイもジンのことを褒めていた。
なのに、性別だけで外されてしまうなんて。


「腹が立ってしようがなかったですよ。自分が女であることが嫌で仕方なくて、私は髪を切り、ジンと名乗り始めました。そういえば、さらしで胸を潰したことも」


女性のジェイダから見ても、その曲線は色っぽい。
それが馬鹿な男であれば、彼女が受けた嫌がらせは想像に難くない。

「そんな時、ロイ様と出会いました。そして、そんな私に言ったのです」


『えー? 勿体ない』


(……ロイ)


「続きがあります」


酷い顔をしていただろうか。
ジンが苦笑して、再び口を開く。


『君に色気があるからって、武術に影響する訳じゃない。仮に見惚れて隙を見せる男がいるなら、そいつが間抜けなのさ。戦いの場では、何が理由だろうと、よそ見などできはしない。そんな馬鹿は、容赦なく叩きのめせばいいんだよ』


「救われた気がしました。私は私のままでいいと」


ジンは、ロイを心から信頼している。
自分との違いを見せつけられたようで、ジェイダは視線を落とした。


「嫌がらせは、なくなりはしませんが。ロイ様は公平に見て下さる。そして今回、仰せつかったのは私です」


誇らしげなジンが眩しい。
いつか自分も、彼を心から信用する日がくるのだろうか。