翡翠の森



「トスティータが北の手を借りて、我が国に攻めてくると。いや、ただの噂だと信じていますが」


『……ジェイダに話しておくことがある』


ロイの顔を見れば、すぐに分かる。
それがいい知らせではないことも……彼が言いたくはないことも。


(……エミリア様)


とても信じられなかった。
あの、ちょっと変わった、美しく憎めないお姫様。
ジェイダにも普通に接してくれた優しい彼女が、兄弟の懸念通りだったなんて。


(きっと、何か事情が……)


そう言いかけ、口をつぐむ。
たとえ、どんな事情があったにせよ、危うく戦になるところだ。
そう簡単に、口にしていいことではない。


「当然ながら、私たちがクルルに仕掛けたりなどするはずもない。しかし、クルルの民が嘘を吐くとも思えません。北が二国の親交を妨げようと、そのような噂を流したとも考えられる」


『幸い、事が明るみに出る前に、兄さんが尻尾を掴んでいた。……上手くやってくれるさ』


(アルフレッド……)


心から信頼していたのではなくとも、最近は夫婦の距離が縮まったようにも見えたのに。
更に一緒にいられる日を重ねれば、本当に結ばれる日もきっと訪れると。

いや、これは勝手な想像であり、希望も入っていることは認めよう。
それでもジェイダの目には、二人の未来が見えていたのだった。